【エッセイ】ちょうどいいキョリ

詩ーポエムー

そら豆を買った

今年は欲張って全部食べてしまったから
次につなぐ種がない

後先考えない悪い癖

思い立ったときも遅かった

狙っていたそら豆はもう売り切れだ

こだわりはない
残りものをポチっと押す

亡くなった祖母を思い出す

「天を見上げたそら豆が
しっかりと下を向き
固く熟すまで採ってはいけない」と・・・

数年前まで
そら豆は固くてしょっぱい煮物だった

好きかと言われればそうでもない
嫌いかと言われればそれは違う

しっくりくる言葉は
「どちらでもない」

ただ
放っておいてもそれなり育ってくれ

かまいたいときに
かまわせてくれる

必要な時に
必要な分だけ
手を差し伸べ合う

わたしにちょうどいい

ちょうどいいキョリ

そういえば気がつくと
毎年そら豆だけは忘れずに育てている

きっと来年の春
私は少し柔らかいそら豆を
思い出と一緒に
口いっぱい頬張るだろう

コメント

タイトルとURLをコピーしました